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みなさんは「TESOL」という資格をご存知でしょうか?

Teaching English to Speakers of Other Languageの略で、英語ネイティブではない方に英語を教えるための資格です。国際的に知られている資格で、この資格を持っていると、英語教育者としての深い知識やスキルを持っているという証明になります。

今回はそんな「TESOL」の取得に関するレポートです。

TESOLを取得しようと思ったきっかけ

日本の高校で英語専任教諭として働いていましたが、授業の中でも日本語をメインに使用し、日本人が日本人相手に英語を教えるということに、ある種の限界を感じていました。

せめてもっと「英語による英語の授業」ができるようになれば、もっと広がりのある授業ができるのではないかと考え、TESOLの勉強をしてみようと思うようになりました。ちょうど専任教諭を退職後、留学の準備をしていましたが、少しだけ時間の余裕があったので短期集中で学べるところを探していました。

通った学校について

TESOLの資格は、大学(学士:Bachelor)や大学院(修士・博士:Master/Doctor)など、正規の高等教育機関で通年で単位を履修しながら取得するものがありますが、いずれも長期の通学が必要ですし、かなり専門的になります。私には時間的にも経済的にもそれほど余裕はありませんでしたので、短期集中で取れるDiplomaコースを選択することにしました。

学校選びは、英語圏で、なるべく日本から近くてコストがかからないところということが条件でした。候補に挙がったのはニュージーランドとシンガポールだったのですが、友人が自宅の一室を貸してくれると言ってくれたこと・まだ行ったことのない国という二点で、シンガポールの学校(British Education Centre)を選びました。

ここの学校では、TESOL Diplomaをイギリスの LONDON TEACHER TRAINING COLLEGE(LTTC)で認定してもらうという特徴があり、すべての教材や試験・評価・証明書もLTTCのものでした。

学校は、今は引越しをしてしまいましたが、当時はシンガポールの原宿とも言えるBugis Streetを通り抜けたところのビル内にありました。英語教育関連の専門学校で、TESOL以外にもIELTSの教授法の授業も開設されていました。

先生は、イギリス出身の教授で、イギリスで英語教授の博士を取得している先生でした。もちろん英語もイギリスの英語です。シンガポールの英語教育事情にも精通していて、ノンネイティブがノンネイティブを教えるということに全く不安を持つ必要はないということを教えてくれた先生でした。

私が受講したのは、1ヶ月短期集中のDiploma in TESOLのコースです。この学校では午前の授業と夜の授業があり、1ヶ月短期集中コースは午前の授業と夜の授業を一気に受講するというものでした。さらに、個人的なスケジュールの関係で先生にお願いをして、昼間の空き時間にも個別授業をしてもらい、濃縮したスケジュールでの資格取得となりました。

午前の授業には午前コースで履修する学生、夜には夜コースを履修する学生が来ていたので、私は午前と午後で両方の学生と教室をともにすることができました。クラスの人数は12人ほどで、シンガポール人がもっとも多かったですが、中にはマレーシア、カナダ、アラブ、韓国出身の学生もいました。年齢もシンガポール人は比較的若い人が多かったように思いますが、長年英語教員として働いていた人や、英語教育とは無縁だけれども今後のキャリアに生かしたい、というような人もいました。

また、実際に行ってみるまでは全く気づかない視点だったのすが、最も特徴的だったのが、TESOLのコースでありながら、学生のほとんどが英語が母語ではないという点です(もちろん、ネイティブ並みの英語力を持つ人は多かったですが)。これは私にとってはとても心強いことで、自分がネイティブではないということに心理的な引け目をとらずにすみました。そういった意味でも、ニュージーランドではなくシンガポールを選択して正解だったと思います。

学習内容について

資格認定のための学習時間は全部で180時間で、授業が125時間、残りは模擬授業と筆記試験およびその準備、教授との個人レッスンを含めたものでした。1ヶ月の間に授業だけで125時間なので、月曜日から金曜日までみっちりTESOLの勉強ばかりでした。週末もほとんど試験準備・授業準備と予習復習などで近くの図書館に行くことが多かったです。

Diplomaを取るために求められていたのは、(1)4つのモジュールの筆記試験と(2)45分の模擬授業でした。授業は4つのモジュールの内容に沿って進められました。

4つのモジュールとは、(1)言語論(2)教授法(3)授業計画に関するもの(4)言語学・言語教育学に関するものでした。教科書は1冊で、その内容がほとんど網羅されていました。

授業では、教科書やプリントを使いつつ、一方的な授業ではない活発な議論を伴う形式でした。日本人としてはこういったスタイルに慣れていないのでなかなか発言のチャンスをつかめなかったり、英語がうまく出てこないという不安もありましたが、12人という少人数制なので、まったく太刀打ちできなかったということはなかったです。

筆記試験は、4つのモジュールそれぞれで行われ、時間に追われながら、問題に対してひたすら論述していくという形式でした。1日ですべての科目を行ったので、試験が終わったときは疲れきっていました。

また、模擬授業はクラスメイトに対して行いましたが、審査員の先生はいつもの先生ではなく、初めてお会いする方でした。授業形式や学習者のレベル設定などは、自分が実際に教えると思われるものを考慮して、自分ですべて決めることができました。クラスメイトにはその設定を説明し、合わせてもらいました。

模擬授業のビデオと筆記試験の答案はLTTCに送られ、1ヶ月ぐらい後に、成績と認定証が日本の自宅に送られてきました。

かかった費用について

授業料は全部で2700シンガポールドルでした。その他、往復航空券代、通学の交通費、食費、宿泊費など基本的な生活費や観光・交際費などをすべて合わせて50万円くらいだったと思います。

シンガポールはとにかく家賃をはじめ、基本的に物価が高いです。そのため、友人宅を借りることで費用を安く抑えることができましたが、そうでなかったらもっと費用がかさんだかもしれません。

その後のキャリアについて

TESOL Diplomaを取得後、すぐに有名私立の中高一貫校の英語教員として就職が決まりました。英語ネイティブによる面接もありましたが、シンガポールでみっちり鍛えてきた直後だったので、とくに問題なく通過することができたのだと思います。

留学準備をしたいということもあり、個人的な希望で非常勤講師を選択しましたが、専任への道も打診がありました。

学校の方針で英語で授業を行うということはありませんでしたが、TESOL Diplomaで学んだ内容は授業をするうえでの自信につながり、授業でも実際に応用できることがたくさんありました。

人生観の変化

やはり、なんといっても「自分が英語ネイティブではない」ということに引け目を取らなくてもいいという価値観に出会えたことです。シンガポールという国自体も、他民族国家で、みんな英語を話すものの母語は別にある、というような人たちだらけで、見た目も同じアジア人ということもあり、すっと溶け込める国でした。普段の買い物などで英語を使うときも、英語を話すのに緊張するだとか、何をどうやって表現しようということを先に考えたりだとか、英語圏の国でありがちな「話すときの緊張」が全くありませんでした。

「英語が正しくあるべきだ」という価値観もすこし柔軟に変化しました。正しい英語とは何かという根本的な問いが、グローバル化に伴い変化しているということに気づかされたような気がします。

おわりに

TESOLはそれだけで英語の授業スキルが身につくものではありませんが、日々の実践の中で、TESOLの知識や経験が役に立ちます。Diploma以外にもCertificateのようなライトなものや、修士・博士などの専門領域に立ち入るものまで幅も広いので、各自の目指す方向性に合ったものを選べるという点ではとてもよくできていると思います。

今回のレポートが、英語教員を目指す方などの参考になれば幸いです。