現在、私は語学学校に通いながら一般的な大学プログラムのビジネスコースを受講しています。学校に通い始めた頃は、先生の話が聞き取れなかったり、理解できないことは毎日のようでした。

しかし、同じ先生の英語を毎日のように聞いていると不思議なもので耳が慣れていきます。耳が慣れてくると単語が聞き取れるようになり、なんとなく意味が掴めてくるようになります。私の場合は1週間ほどで先生の英語に慣れてきました。

語学学校の先生は学生たちが英語を聞き取れないことや、理解できないことを分かっているため、それぞれ工夫をするようにアドバイスしてくれます。今回は、英語が聞き取れない場合にどのような工夫をすればいいかというテクニックや活用方法を紹介します。

あくまでも私がもらったアドバイスや実体験がベースですので、ひとつの参考程度に考えていただければ幸いです。

1 意思表示の重要性

英語が聞き取れない、理解できない場合に重要なのは「意思表示」です。特におとなしい日本人は、英語がわかっていないにもかかわらず、授業に黙って参加していることが多く、自然に周りから英語を理解できていると思い込まれることが多くなります。実はこのことは後々、厄介な事態を巻き起こす原因になります。

私が通う学校では、学校の方針として録音可能です。なかには授業ノウハウの流出を恐れて録音を禁止する学校もあるようですが、幸運なことに私の学校では録音が許可されています。

私が受講しているビジネスのクラスは、専門用語や経済用語が多く、なおかつアメリカ人に向けた授業のため、語学学校の先生の英語とはまったく別物です。語学学校の先生は、正確にかつクリアに発音し、なおかつ短いセンテンスを使う、いわゆる「ティーチャーイングリッシュ」です。

一方でビジネスのクラスの英語は言うならば「リアルイングリッシュ」です。複雑な発音や長いセンテンス、そして専門用語が飛び交う説明をリアルタイムで聞き取り、理解するのは正直なところかなり難しいものです。

英語のスキルは個人差があるため一概には言えませんが、語学学校に通う必要があるうちは、一般的なアメリカ人向けの授業はついていけないと考えていいでしょう。私も例外ではなく、正直なところビジネスのクラスはリアルタイムではついていけません。

先生が話をしている内容を理解できず、さらにはトピックすら分からないこともあります。これはとても良くない状況であるため、毎回授業を録音しておき、ついていけない部分を自宅で補うようにしています。

私の経験上、英語のリスニングやコンプリヘンション(理解力)に自信がない人は、コースが始まった最初の授業の際に(多くはシラバスの説明でしょう)先生へ英語力に自信がないことを申し出ておくことが極めて重要です。

この申し出をしないまま授業に参加し続けていると、先生やクラスメイトは勝手に「英語を理解できている」と解釈してしまい、授業中に意見を求められたり、課題を突きつけられたりして、大慌てしてしまいます。

予め、英語力に自信がないことを伝えておけば、話が振られるときに簡単な英語を用いてくれるようになったり、重要なパートに関して理解できたかどうかを尋ねてくれるようになります。このことは授業に参加するうえでとても重要なことです。

実際に、私は英語力に問題があることを先生に伝えずにしばらくの期間、授業を受けていたため、先生に英語を理解し授業についてきていると思い込まれていました。このことは当然と言えば当然なのですが、事態が大きくなったり、大きな問題に発展する前に、伝えておくことは重要です。

英語が不慣れなうちの鉄則は、先手を打って英語力に自信がないことを打ち明けておくということです。この意思表示は長く続く授業において、後々効果を発揮するので、恥ずかしがらずあらかじめ伝えておきましょう。

2 鉄板の方法は録音

私は語学学校の授業は録音することなく授業についていけますが、一般的な英語圏の大学生向けカレッジプログラムであるビジネスの授業は毎回録音しています。私が録音する際に使用するのはiPhoneの標準アプリで、一番前に座ってそれなりに先生の声が届くように陣取っています。

授業を録音しているのは英語に不慣れな私だけだと思っていましたが、授業中に周囲を見渡すと、多くのアメリカ人学生も録音をしていました。なかには、プロが使うようなボイスレコーダーを持参して録音する学生もいるほど。

もちろん彼らの目的は、自宅で復習したり重要なポイントを再確認するためで、私のように英語が聞き取れないから使っているわけではありません。余談ですが、面白い事実として、授業を録音している生徒ほど成績が優秀という法則もあります。

私が受講しているビジネスの授業は1回がだいたい1時間、テストが近かったり、議論が白熱した場合は1時間30分ほどになります。すべて録音しても30MB程度で、帰宅後にすぐにパソコンにダウンロードしておけばデータ容量の心配もありません。また、iPhoneのマイク性能は十分に機能するため先生から離れていてもしっかり声を拾っています。

利便さや機能の高さを理由に、私はiPhoneの標準アプリを駆使して授業についていくようにしています。

3 情報量が多い、録画式

私の先輩は授業を録画していました。コースが始める前に先生の研究室にまで出向いて、英語に自信がないから授業を録画させてほしい旨を直談判。快く快諾してもらえたらしく、毎回教室の一番後ろに三脚とビデオカメラを設置し、授業を録画していました。

録音よりも先生の身振りや手振りもあるため、自宅で復習する際にどこか重要な部分かが分かりやすいのがメリットだと言っていました。さらに、何度聞いても理解できない英語に関しては口の動きを見たり、ジェスチャーなどで判断していたとのこと。

録音方式と比較して、視覚による情報量も加わるためかなり有益だったと言います。英語が得意ではなかったものの結果的に最優秀生徒としてその授業をパスできたそうです。

近年、録画したものが簡単にインターネット上に配信できてしまうため、抵抗を示す先生もいるかもしれませんので、この方法を検討する場合は事前にしっかりした打ち合わせをするようにしてください。

4 文字起こし

私は英語の練習やライティングの特訓も兼ねて、録音した授業を何度も繰り返し聞いて「文字に起こす」ことをやっています。正確に聞き取れない箇所は?マークを記載して、聞き取れた部分だけをひたすらパソコンでタイプしていくのです。

1時間の授業を文字に起こす作業は私の場合はおおよそ34時間かかります。しかも出来上がったものは、聞き取れない箇所や意味不明の箇所も多く、時間がかかった割に達成感が湧かない代物です。

しかし、文字起こしを繰り返していると耳では聞き取れない部分を視覚情報として認識できるようになるためとても有効だと分かります。例えば、話す人によってはほぼ発音していないように聞こえる「as」や「of」などが文字起こしをすれば浮かび上がってきます。

なぜなら「as」や「of」がないと文法上意味が通じなくなるセンテンスだと気がつくからです。文字に起こした際に「as」や「of」の箇所をどのように発音しているかを何度も何度も聞いてみると、確かに「as」や「of」らしき発音が含まれていることに気がつきます。

いずれも、かすれるような発音で、なおかつ次に発音される単語の先頭の言葉とくっつけられるように「ス」や「ブ」と言っているのです。この事実が耳だけでなく、目でも理解できるようになります。これが文字起こしによるメリットと言えるでしょう。

何度聞いても理解できないセンテンスは、ひとまず文字に起こすことで文法上の問題点や欠点が浮かび上がってきます。そこで文法上成立する単語は何かということを考えるのです。徐々に絞れて来た可能性のひとつを頭に浮かべながら、改めて聞き直すと答えが見えてきます。

ひとつのセンテンスにここまで時間をかけるのは非常に効率が悪いですが、時間をかけた分、印象に残りやすく、次に同じような問題に出くわした際にすぐ思い浮かぶようになるものです。

英語に関して、分からない部分や理解できない部分は、インターネットで調べて一瞬で解決したり、ネイティブに尋ねて解決してしまうのではなく、自分の力で時間をかけて苦労する方が、強く印象に残るため後々役立つものです。

私はこの「印象に残す」ことが私にとって有効だと気がついて以降、多少効率は悪いかもしれませんが文字起こしを続けて、苦労して理解するように心がけています。学生のうちは時間があるので、このような非効率的なやり方が出来るのかもしれません。

5 録音をマネる

紹介してきましたように英語が理解できない、聞き取れないうちは録音や録画がおすすめです。さらに、それをものにするためには「マネる」ことも有効です。いわゆる「シャドーイング」というテクニックですが、私はこの方法は本当に有効だと感じました。

まず、実感することとしてシャドーイングを続けていると顔や口の筋肉が英語用になっていくのです。さらには舌の動きも日本語用から英語用に変化していきます。個人差があるかもしれませんが、シャドーイングをしばらく続けたあと、さりげなく発音した英語が非常に滑らかにでてくるようになります。

詰まるところ、日本人が英語の発音が苦手なのは筋肉と舌が「それ」用になっていないからです。舌をどのように使うとか、唇を噛むとか噛まないとか理屈を覚えたとしても、それを動かすための筋肉が機能しない限り再現できません。

例えるならば、泳げない人が、水泳の授業を見ているだけで泳げるようになるかという話です。泳げない人は、実際に水に入って体を動かして、泳ぐための筋肉の動きや使い方を実際にやってみて泳げるようになるものです。なかには天才肌の人もいるでしょうが、残念ながらごくごく一部の人だけで、天才肌は語学学校を必要としていないでしょう

このことは語学学校の先生から教わったことですが、冗談のように顔や口、首周辺の筋肉が英語用になっていきます。シャドーイングは自宅で人目を気にすることなく出来るのでおすすめです。さらには、続けていると英語の言葉の並べ方も身に付いていきますので、自然に文法も身に付きます。

英語を理解するための録音や録画から、ひとつ工夫を付け加えるだけで発音にも効果があるのでシャドーイングは試してみる価値が高いでしょう。

まとめ

英語の授業についていけない人は、録音や録画がおすすめです。しかしながら、重要なのは紹介したように「録音と録画の素材をどう活かすか」です。

私の場合は「文字に起こす」と「シャドーイング」で、録音したものを身につけるように努力しています。文字に起こすのは時間もかかり、徒労に終わることもあるので、せめてシャドーイングは実践してみてほしいと思います。

さらにシャドーイングがネイティブに通じるかどうかを試せればベストです。自宅でそれなりに上手に発音できたり、イントネーションができているようでも、ネイティブからすれば「そこで息継ぎはおかしい」とか「区切る位置が違う」など問題点が出てきます。

英語についていけないうちは、録音と録画した物をどう使うかが重要です。