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「英語」に関わる仕事シリーズ、今回は、なんと、日本人として、スイスで「カジノのディーラー」のお仕事をしている方のキャリア記事です。

自己紹介と「ディーラー」としてのキャリア概要

私は現在スイスのルガノ市に住んでいます。オーストラリア、イタリアに語学留学したのちカジノでの仕事に興味を持ち、「ディーラー」になるためにイギリスのカジノでインターンシップとして仕事を始めました。そこで仕事をしながら「ディーラー」になるための勉強をした後、イギリス、イタリア、マルタ島のカジノで働き、今はスイスで働いています。

日本には今現在カジノがなく、「ディーラー」といってもどんな仕事なのかあまりピンとこない人も多いと思います。「ディーラー」はカジノのテーブルゲーム(ルーレット、ブラックジャック、ポーカーなど)でプレイヤーの賭けを受け付け、ゲームを進行して賞金を払う人です。映画とかでよくみるカジノのシーンで、テーブルの後ろでルーレットを回したり、トランプを配ったりしている人ですね。「ディーラー」はいろんな国または、クルーズ船のカジノで働くため、コミュニケーションをとるのに英語は必須です。

この職業を目指した理由・経緯・きっかけ

オーストラリアに留学中に遊びに行ったカジノで、始めてディーラーと言う職業があることを知りました。そのときは特に興味を持たなかったのですが、その後イタリアに留学したときに知り合ったイギリス人のDさんが「ディーラー」をしていて、その人から「ディーラー」の仕事の魅力を教えてもらいました。

「この仕事がしたい!」と思った一番の理由は、英語を生かすことができるということと、世界中を旅できるということ。Dさんも母国で勉強した後、クルーズ船で働きながら世界中を回り、イタリア、ブルガリア、フランス、スイスとヨーロッパ中で働いた経験がありました。

「ディーラー」になるためには学校で勉強する必要があります。しかし、学校に行くにはそれだけの費用もかかってしまいます(ヨーロッパでは約20万前後、120~150時間)。そこで私は、仕事をしながら勉強もできる、インターンシップという方法をとることにしました。イタリアでもあったのですが、英語で仕事を覚えたかったので、Dさんが働いていたイギリスのカジノでインターンシップ生を募集していることを知り、応募することに決めました。

書類選考の後、面接を受けるため、私はイギリスに向かいました。英語での面接ということで少し不安もありましたが、オーストラリアに2年留学していたので、なんとか突破することができました。それから約1ヶ月、合格の通知が来て、ついに私はイギリスのカジノで働くことになったのです。

2005年11月、晴れてカジノの従業員になった私ですが、すぐに「ディーラー」の勉強を始めるわけにはいきませんでした。スロットのホール、レセプションそれから、キャッシャー(換金所)で働くための研修からです。それには各セクション、一週間ずつの研修を終えてから、研修生として2ヶ月ずつ働いて、その後に「ディーラー」になるためのコースに参加させてもらえます。1日8時間働いて、3時間のレッスンというハードスケジュールを3ヶ月間続けました。もちろんレッスンは全部英語。そのおかげもあって私の英語はこの期間でとても上達しました。その後、「ディーラー」の研修生として6ヶ月働き、ようやく一人前です。研修期間中は給料も半分しかもらえず金銭的にも、体力的にも、苦労は並みではありませんでした。

会社、業種、職種と仕事内容

私が最初に働いた会社は、カジノとしては小さいほうで、従業員の数は300人ほどでした。私のようなテーブルゲームを担当する人が約80人、スロットを担当するアシスタントと受付、換金などを担当するホストと呼ばれる人を合わせて約80人、バーやレストランで働く人が50人くらいで、残りはマーケティングや、人事などオフィスで働く人たちです。

「ディーラー」が扱うゲームは様々で、働く国やカジノによっても違いますが、最初のコースで、ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、バカラを勉強し、その後新しいゲームを必要に応じて徐々に学びました。これらのゲームの進行、ゲームに必要な器具の操作、カードやチップの回収と配布、チップの両替が基本的な仕事ですが、これは勉強すれば誰にでもできます。それと同じくらい大切なのが、ゲスト対応、場合によっては、ゲストの監視です。ゲスト全員に、快適にゲームしてもらえるように対応しなければいけません。また、不正などがないように監視し、それを見つけるのも「ディーラー」の仕事です。ただトランプを配り、ルーレットを回すだけでなく、ゲストとの会話も「ディーラー」の重要な仕事です。そのためにも、英語は「ディーラー」にとって大切な仕事道具の一つと言えるでしょう。

1日のスケジュール

カジノは基本的に夜の仕事です。ラスベガスなど大きなカジノでは24時間営業の所もありますが、私が働いていたカジノはお昼の2時に開店し、平日は朝の4時まで、週末や祝日の前の日は、朝の6時まででした。その15~17時間をシフト制で働きます。

  • PM01:00~PM09:00
  • PM05:00~AM01:00
  • PM08:00~AM04:00
  • PM10:00~AM06:00

月ごとにシフトが組まれ、それにしたがって、この4つの時間帯を交代で務めます。

1日の仕事の流れはどうなっているのか。PM1:00~9:00のシフトの場合を見てみましょう。

  • PM12:30   出勤(制服に着替えるなどの準備)
  • PM01:00   ミーティング
  • PM01:15   開店準備
  • PM02:00   開店
  • PM08:50   引継ぎ
  • PM09:00   終業
  • PM09:15   退社

スタッフみんながそろうと、ミーティングが始まります。ミ-ティングでは仕事上の注意事項、キャンペーンなどを行っている場合はそれについて、VIPゲストが来る場合は、そのゲストについてとその対応方法などが「スーパーバイザー(責任者)」から伝えられます。

それからホールに入って開店の準備。テーブルのカバーを取って、「スーパーバイザー」から渡されるトランプをチェックして指定の場所にセットします。チップをテーブルの上に並べ、金額と枚数を確認した後、これも指定の場所に準備します。これらの作業は全て、ゲームテーブルにセットしてあるビデオカメラと、「インスペクター」と呼ばれる監視係の人と一緒に行われます。

ゲストが入ってきて、テーブルに座ればゲーム開始です。集中力を要する仕事なので、大体1時間ごとに15分の休憩が入り、7時頃には30分の食事休憩があります。「スーパーバイザー」がその日ごとに作る「ターンテーブル」に、どのテーブルにいつ、誰が着くか、どのタイミングで誰が休憩に行くかなどが記されているので、それにしたがって休憩、仕事をします。分単位で動いていているので時間厳守は基本中の基本。1分遅れただけでもスタッフ全員に迷惑がかかってしまいます。

就業時間10分前に来る次のシフトで働く同僚と引継ぎをしたら、仕事終了です。

キャリアデザインと報酬

先ほども触れたとおり、「ディーラー」は夜の仕事です。そして、基本的にカジノは年中無休なので、土日祝日も働かなくてはいけません。朝に弱い私には、1時に始まるこの仕事はあっていましたが、夜に弱い人には向かない仕事です。イギリスにいたころは未婚で子供もいなかったので、週末や祝日に働くことは苦になりませんでした。しかし、パートナーや子供、友達と時間の合わないこの仕事は、残念ながら、結婚や出産などを考えるには不向きな仕事だと思います。

それでも、不向きだというだけで不可能ではありません。私の同僚に、結婚、出産後も「ディーラー」として働き、出世もしているSさんもいます。Sさんは「ディーラー」として働いている間に結婚、出産して、仕事に戻ってから3年後「インスペクター(監視係)」に出世しました。それから3年で「ピット・ボス(ある範囲内での責任者)」になり、今は「スーパーバイザー(責任者)」として働いています。

この仕事の魅力のひとつに給料が良いということが上げられると思います。夜の仕事は基本的にどの仕事でも給料が高めですよね。今から約10年前、私がイギリスのカジノで働いていた時の年収は1年目で13000ポンド(2005年、1ポンド約200円だったので、日本円に換算すると約260万円)でした。これは固定給で、一ヶ月1000ポンド、ボーナスは1か月分なので、合計で13000ポンドになります。しかし、「ディーラー」の収入のもうひとつの要素はチップです。チップは平均して、月に500ポンドもらっていたので、それを合わせると年収19000ポンド(380万円)になります。ちなみに、2005年、日本の高校卒の初任給が16万円だったことを考慮するとかなり良い報酬ですね。

インターネットで調べてみたところ、2017年現在、イギリスの「ディーラー」の平均年収は25500ポンド(2005年と比べるとレートがだいぶ下がって今は1ポンド150円程度なので日本円では約380万円)とありました。ちなみに、ラスベガスの平均は37000米ドル(約416万円)ということです。

カジノの業界展望

カジノ業界全体的にみて、あまり業績は良くないようです。2008年に始まった世界的な不況も手伝って、カジノの利用者が減少し、ゲスト一人一人が使う金額も減っています。この不況に寄与するギャンブル産業の具体的な原因として、オンラインギャンブルの普及とスクラッチやTOTOなどのゲームの人気が高まったことが上げられると思います。

近年、常に売り上げが減少していたカジノ産業ですが、2015年、2016年と2年続けて増加の傾向を示しています。日本でもカジノ法が成立しました。今後「ディーラー」の仕事は、海外だけでなく日本でも求められる職種になると思われます。

英語の習得について

「ディーラー」だけでなく、海外で仕事するために絶対に必要な英語をどのように習得するか。今では小学校から勉強を始めるので、高校卒業の時点では10年以上英語を勉強したことになりますが、この時点で英語を使って仕事ができる人はどれくらいいるでしょうか。限りなくゼロに近いと思います。学校で習った単語は分かるし、文法も知っている、しかし、コミュニケーションがまったく取れないという人がほとんどだと思います。私もその一人でした。

「海外で仕事、生活がしたい!」そのためには英語を話せるようにならなければいけない。そう思った私は、留学することにしました。高校卒業後、オーストラリアで語学学校に1年間通いました。私が行ったころ(2000年、2001年)は、今と比べるとずいぶん物価も安く、1ヶ月10万で学費と生活費を賄っていました。

もちろん学校で学ぶのですが、私にとって一番の先生は「友達」でした。留学1年でずいぶん上達して、アルバイトぐらいはできるレベルになり、そのあと専門学校に行き始めて、現地の友達もでき、その友達と話しながら学んだことは数え切れません。「学校である程度文法を頭に入れたら、ひたすら話す」、これが英語を話せるようになるのに一番の早道だと思います。私もそうでしたが、外国の人と比べて特に日本人は失敗を極度に恐れる傾向があります。「間違えたら恥ずかしいから話さない」と無口になりがちですが、それでは一向に上達しません。間違いだらけでも良いからとりあえず話してみてください。そうやって話しているうちに知らず知らず上達しているものです。

2年の留学後には、英語検定準1級をとることができました。それからも、友だちや職場の同僚、お客様と話しながら常に勉強しています。

まとめ

私はこの仕事と出会うことができてとっても幸せに思います。「世界中を見て回りたい」という小さいころからの夢を現実にしてくれた仕事です。実際イギリスで5年間働いて、それからイタリア、スイス、マルタ島と3つのカジノで働きながらヨーロッパ中旅行をして楽しんでいます。クルージング船に乗れば、今のように、1年に数回の旅行だけでなく、本当の意味で、仕事をしながら世界中を見て回ることもできます。将来クルージング船で働けるように「ディーラー」としてさらに経験をつんで、英語、イタリア語だけでなく、他の言語も勉強したいと思っています。

どうでしたか。海外で仕事をすることに興味がわいてきましたか。そのためには色々と障害や苦労もあるかもしれませんが、1つずつクリアしていけば必ずたどり着きます。難しければ難しいほど夢がかなったときのうれしさは大きくなります。

諦めずに頑張れば、夢はきっと叶います!