前編に引き続き、山口英人さんにお話を伺います。

講習会やセミナーをすることで新しい発見も

帰国後はカフェやスイーツなどの業務用調理機器を扱う会社に就職したんですよね?

山口さん
はい。そこで専属バリスタという肩書きをもらって、社外のカフェトレーニングをしたり、セミナーの講師をしていました。

社外の方にトレーニングというのは?

山口さん
新店舗のオープンや新しい調理機器を使ってもらうときのプレゼンテーションなどですね。カフェのスタッフに向けた指導、お客様に向けたデモンストレーションも含みます。

なるほど。大会の審査員もされていたとのことですが、私も一度、見たことがあります。バリスタ選手権みたいなイベントで、ハンズフリーマイクを付けてトークしていました。審査員は仕上がり具合と味をチェックするんですか?

山口さん
大会によって審査内容が若干変わりますが、大抵は「味」「技術」「トータル力」で審査します。

トータル力というのはトークテクニックですか?私が見たときはベテラン営業マンのようなトークで、マシーンを買いたくなるほど圧倒されました。

山口さん
それを含めたプレゼンテーションですね。プレゼンテーション、サービステクニック、バリスタとしてのパッション、それらを並列でチェックします。

なるほど。そういうイベントを見ると私もやってみたいと思ってしまいますが、どんな不器用な人間でも練習すればできるようになります?

山口さん
どのくらい練習をすればというものはないですけどね(笑)。死ぬ気でやればきっと。

でもセンスってありますよね。

山口さん
それはあるかもしれません。先日も専門学校生に向けてレクチャーしたんですが、そのとき「この子はセンスあるかも」と思う子がいました。

ほかの人とどこが違ったんですか?

山口さん
たとえばカプチーノを注ぐとき、普通は注ぐ方(右利きなら右手)を見がちです。でもその子は受け手のカップの動きも注目していたんです。一か所ではなく、そういう部分も気になるという視点がいいなと思いました。

教えながらそういうところも見てるんですね。

山口さん
つい、と言うか、反応も気になりますしね。

お話を伺ってると、すべてにおいてコミュニケーションを大事にしてるんだなって感じます。そういえば、今でも講習会をされてるんですね。

山口さん
たまにですけどね。オムレツ講習会とかエスプレッソ飲み比べ講習会なども。

面白そうな企画ですね。飲み比べとか食べ比べって心躍るワードです。

山口さん
そうです?まあ、講習会やセミナーをおこなうと新しい発見もあるし自分の勉強にもなるから、不定期でもたまにしたいなと思っています。

講習会やセミナーをすることで新しい発見も

ミラノとフィレンツェは原点

イタリア修業のとき、どのくらいイタリア語を勉強してから行ったんですか?

山口さん
1年くらいです。週1回のレッスンがあって、あとは自宅で。

イタリアで生活するには困らないレベルに達しました?

山口さん
達してません。ずっと困ってましたよ(笑)。ホームスティ先のおばあさんが英語を話せたので、それで何とか。

英語は話せたんですか?

山口さん
受験英語くらいですね。と言っても学生時代の成績は普通程度ですが。

受験英語だと筆記が主ですしね。イタリア語も読み書きから始めたんですか?

山口さん
その時は店で働くことが目的だったので、スピーキングとヒアリング、リーディングを中心に勉強してました。メニューと最低限のコミュニケーションを取れるようにと。

で、語学学校である程度のレベルに達したから修業先を紹介してもらったんですよね?相当、頑張ったんじゃないです?

山口さん
早く修業したかったですから。

目標があると上達も早いのでしょうか。順調に聞こえますけど、挫折を感じたことはなかったんですか?

山口さん
まあ、感情の波はありましたけど、辞めたいと思うことはなかったですね。

大きな波ではなくても多少のがっかり感とか、「あぁ…」と思うようなことは?

山口さん
そういえば、修業先のイタリア時代、二度もスリに遭いました。

どんな状況で?

山口さん
バスでおばあさんに席を譲って話しかけられたときです。何を言ってるのかと必死に聞き取ろうとしていたら…。

おばあさんとスリがグルってことは?

山口さん
それはないと信じたいですけど(笑)。

ですよね(笑)。

山口さん
料理にあたって食中毒で倒れたり、帰国の際に荷物の重量オーバーで20万円以上の追加料金をとられたり。1年もいればそれなりにありましたけど、今となっては思い出かも。

20万はかなり痛い出費だったでしょうけど。

山口さん
ですね。

シチリア島にて

シチリア島にて

店名の「クーポラ」はどういう意味ですか?イタリア語?

山口さん
はい。ドゥオーモ(大聖堂)の丸天井部分のことです。

屋根の丸いドーム?

山口さん
そうです。フィレンツェの名所といえばドゥオーモだし、その象徴的な部分(クーポラ)を店名にしたいなと。やはり、フィレンツェはこの仕事の原点ですから。

そこから始まったんですもんね。

山口さん
店のロゴマークもクーポラをイメージして作ってもらったんです。

可愛い。これも掲載させてくださいね。今日はお忙しい中、ありがとうございました。

クーポラ